「FREEの感想/個人製作のゲームにおけるフリー戦略」

読みました。なんか噂が噂を呼び、大層な評価をされてる本なので、感想を書きたいと思います。
 
111が読んだ限り、”多分みんな、ユーザーとして肌で分かってるよ”ということでした。
とりあえずこの本のユニークな概念としては
 
 ・情報(ビット)はFREEになりたがる(コストが限りなく0に近づくから)
 ・(アトムとかビットとか表現してるが)要するにリアルにあるものはコストがまだまだ下げにくいのでFREEはまだ先
 ・評価経済
 
とかあります。あとは大体、FREEの歴史(ジレットの、ひげ剃りを無料で配って替刃が有料とか)、アメリカの会社とかアーティストの例をとりあげて、これはこうと言える、こうじゃないか、とか扱ってるだけですから。オープンソースとかね。
あとはFREEにする利点とか。
なんだと思います? FREEの利点。
 
そうですね、少なくとも値札付けるよりは多くの人に手に取って貰える、ってことです。多分いま考えた通り。それを言ってるだけです。
 
でぶっちゃけ、聞きたいのは、FREEでどういう風にしたら上手くいくか? って具体的な手法じゃないですか。グーグルみたいなでっかい企業の話じゃなく、一個人レベル、一中小企業が明日から取り組めるようなことを、ステップとして語って欲しい。ね。
大体の人がそれ目的じゃないかと。
 
これに関しては色々、直接的内部補助や! とか4つくらいFREEで稼ぐパターンを上げて説明してるんですけど、ここでもちょっと考えてみましょうか。「FREEで儲けるにはどうしたらええんや?」。
そうすると、大体思い付いたであろう事が載ってるだけですから。というか現実にあるFREEのモデルを解説し、単語をあてはめただけですから、まぁそうなるでしょう。
 
 ・PV集めて広告で稼ぐ
 ・無料で集めて、有料版を買って貰う(←フレーミアム)
 ・無料で集めて、有料の他の商品を買って貰う(*売る商品自体が違う)
 ・企業だったら株価上げてバイアウト
 ・音楽CD、割れられてもいいんじゃない? ライブで稼げば(←評価経済
 
とかでしょう。うん。まぁそのくらいが書いてある。大体みんな思いつくよね? だからまぁ、あえて読むまでも無い・・・かなと・・・。
 
まぁ考えてみれば、小説とか全文をwebに掲載しても、読みにくいですからね。PCのモニターで300ページの文量とか読む気になります?
けっきょく気に入ったら本で買う人もだいぶ居るでしょうし、人気を呼べば、作者本人の講演とかもあるでしょう。
音楽もまぁyoutube上にあったりするのは、大体音質が劣化してるから、CDで買う人もいるかも知れない。自分がそうだし。ライブもあるし。
(*個人的に、CD=印税 と、ライブ=肉体労働 という風に、全然労働形態が違うと思うのですが。要するにCDは1回出したら寝てても稼げる場合があるけど、ライブは働く量=お金 だよね? と・・・。代替にはなっていない気がする。)
 
ん? ゲームは? というと・・・
 
まぁゲームに関しても例をあげていて、この辺はみんな感じてる所だと思いますが、ソーシャルゲームアバターとか。オンラインゲームのアイテム、色々効率的になるオプションとか。有料で売っていますよ、と事例を紹介。
・・・おめえ、クリス、”情報(ビット)は早晩、コストが低くなるし(*たくさん売れれば一枚辺りのコストが減っていく。1万1本目と、1本目では、かかってるコストが違う。)もしくは割れによって強制的にFREEにさせられますよ、情報はフリーになりたがるんですよ”って言ってたじゃねえか。
結局別の機会でビットを有料で売るなら、別にフリーになりたがってないのでは? プロテクト出来るかどうかの問題でしょ・・・と思いました。単純にオンラインのが割れにくいだけで、もし新しいプロテクトが出て来て、DL型のも保護できるようになったら、全然普通に守れるでしょう。0円で配んないと思います。(・・・いや、他の娯楽と比べて、他の娯楽が0円になっているから、やはりフリーにせざるを得ない?)
 
ともかくゲームは、ビット→アトムと形を変えて稼げる、小説や音楽とは本質的に違う気が。早い話、課金アイテムも割れられたらどうすんの? って事なんですが・・・
じゃあゲーム、全然おいしくねえの? ということで111はゲーム製作者なのでこの件に関してかなり考えてみました。結論は◆◆◆◆印の後。
 

 
この本を読んで(111的に)活かせそうと思ったのは、
 ・1から100まで全部FREEだと、人は価値を感じない(潤沢にあるものには、人は価値を感じない →稀少なものに価値を感じる。有料であれ、人気作であれ)
とかですね。
 
何でもFREEにしちゃったら、0円にいくら掛け算しても0は0、という元も子もない話です。
だから無料で集めて有料。という事になるんですけど。
そういうのは昔からあったけど、卵1パック無料、みたいなビラを配るにしても現実ではお金が掛かる。配布コスト。配れば配るほどお金が掛かる。加えて、ビラを配れる地域ってのも限られてる。
でもインターネットなら、配布コストもごく安く、ボーダーレスに広まっていく可能性がある(日本語オンリーでやってるようじゃ、FREEは成功しにくんでしょうか)
 
あとのFREEのコツとしては
 ☆単純にフリーゲームが投下されても、騒ぎになるのは難しい。それより「2000円だったゲームが今なら無料に」ならやってみるかという気分が出る。「フリー感」が出て、口コミになるだろうと。
 
この場合の”フリーになった”ってのは一つのキャッチコピーで、これはプレイする動機にも、人に説明する際にも便利ですから。
FREEの利点――多くの人が手に取る動機になる、のまた一つの理由ですね。
 
 ☆やるからには、体験版、みたいなハンパな形じゃなく、本来「ありえない」、丸ごと本体フリーくらいやらないとインパクトが無いので、口コミにならない。PV集められない
(*商品の95%を公開して、残り5%を有料、利益を乗せる。PVが集まったら、買う人の総数も増える。買う割合としては、10%が理想だそうです。
 
この辺は公開してる分で、有料版へどう誘導するかが鍵ですかね・・・。こういう具体的なテクニックもやっぱり載ってないですが)
 
で後は稼ぎ方。
それは<別の形式>で売ればいいと。広告が取れればそれが一番だろうし、文章がコピーされたとしても、あの文章の元を作った人だ、で講演してもいい。あるいはコピーがまだ出来ない、実物を売って稼ぐか。
という話。若干まとめてみました。
 
なのでFREE、大層な話じゃない。広告の一形式じゃん、という感じなんですが・・・。
 
稼ぎ方で補足するなら、仮に10万人が集まってその内の10%、1万人の注文が殺到しても、もし現実にあるもの(=アトム)で稼ぐ方式だったら、そんなのさばき切れる訳がない。アトムには在庫コストも、新しく生産するコストも掛かる。
だから10万人なら1000人くらいが適正で、そうする為に高価で作り込んだ方がいい、っていう感じでしょうか?
 

 
・・・でこれを聞いて、なるほど言う事は分かった、今日からFREEだ! とやるかどうかとなると・・・、微妙ですよね・・・。まだうさん臭い、怖い。疑ってしまう。
まぁ仕方ないと思います、要するにこれは、『リスクを取ってリターンに期待する』という行為で、こうなると確実に頭で分かってもやれない人というのは出てくる。
そうなるとやったもん勝ちな訳で、えいっと目を瞑ってやれば成功するかも知れない。(もちろんリスクを取るということは悪い目がでれば、単に利益0円、アホな男、という烙印を押されるという事でもある)
起業もリスクを取ってリターンに期待する行為だろうけど、だからか、中小企業の社長なんか頭が良いスマートな男ってのはいない。むしろ脂ぎった行動派なイメージ・・・です。(FREEは起業よりはリスクが少ないでしょうが。)
 
そして想像できるように、FREEで成功事例が増えて、みんなやり始めたら、注目を集めるのはどんどん難しくなっていくのは自明。要するにその時は、リスクもごく小さくなり、代わりにリターンも薄くなっている訳ですから。
 
今、行動できるか否か? 今行動できない奴は一生負け犬ということです!(自己啓発的に決断を煽る ・・・別に一生負け犬ではないと思う)
 
ここで、終わりごろの一文を紹介したいと思います。

フリーは魔法の弾丸ではない。無料で差し出すだけではお金持ちになれない。フリーによって得た評判や注目を、どのように金銭に変えるかを創造的に考えなければいけない。その答えはひとりずつ違うはずだし、プロジェクトごとに違うはずだ。その答えがまったく通用しないときもあるだろう。
それは人生そのものとまったく同じだ。ただひとつわからないのは、失敗の原因が自分の貧困な想像力や失敗への恐れにあるのに、それをフリーのせいにする人がいることだ。

  
微妙にインチキ理屈(「人生そのものとまったく同じ」←すげぇ曖昧じゃね?)とか、信仰が足りないからすくわれないんだよ! という理屈とも同じ・・・な気がしますが。信じるものは救われる。
じゃなく、FREEを活用した個々のやり方が必要だという事や、未来を期待しFREEに踏み切れるか、というリスクを取る行為を示唆させる、まとめの一文にふさわしいと思います。
 
・・・そして、そうは言いつつも「答え」を知りたがるのが人間なので、第二・第三のFREEの解説本が出るのを狙った文でもあると思う。自分もこれだけ書いてるし。
そして本書もFDFで公開されてるらしく、かくしてFREEブームは起こった。ブームというのは一人では起こせない、口コミがともなう、という明確な事例でもある訳です。うまいやりくちだぜ!
 
自分も、やるかやらないかだけだと自問自答しつつ、やっぱ安易な人間であるわけで

  
とかを買っちゃうと思います、この先・・・。
 
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これからは111ちゃんのFREEボーナストラックだよ。
情報がFREEになりがたるなら、果たしてゲームに未来はあるのか? というね。
 
まずシェアゲームから。
無料でPVをわっと集めて、有料を売るフリーミアムの成功例を紹介します
 
「冠を持つ神の手 攻略支援版」
 
現状のこの販売サイトにおいて、一般向けの作品というのはかなり市場が小さいのですが、2500本近くというのは見事に成功してると思います。
これ、本体自体はフリーで配られていて、攻略支援板ですよ。攻略支援板が2500本。
普通に考えたらいくら面白くても、そんなのフリーで遊んで終わりだよ、となるじゃないですか。でも違った。
本当に紹介するにふさわしい、フリーミアムの成功事例だと思います。
 
次に「ゲームを無料で配り、別のもの(実物があるもの)を有料で売る」でピンと来たのが、「フリーゲーム作家」のアンディーメンテ
 http://f4.aaa.livedoor.jp/~jiscald/
 
今は小説家となっていまして、製作の話もたくさん織り込まれた
「エレGY (星海社文庫)」
でも
 >フリーウェアゲームとは、無料のゲーム。
 >0円のゲームを幾ら作っても、儲からないのは当然である。
 >では、どうやって収入を発生させているのかと言えば、二次商品をネットで販売する事で所得を得る。
 >例えば、フリーのRPGを製作し公開したとする。
 >すると、少ないながらも必ずそのゲームのファンが生まれる。
 >僕はそのゲームのサウンドトラックCDやファンブック等を作って、彼らファン達に有料で販売するのだ。
 >何故、ゲーム本体に値段をつけないのかと言えば、僕のような個人がゲームを製作し有料で販売しても、一般企業のコンシューマーゲームに太刀打ちするのはほぼ不可能であるからだ。
 
と述べている。ちなみに
 >僕が運営するゲーム製作サイト『アンディー・メンテ』の毎月の収入は、良くて15万円。新作のゲームが出ない付きは無収入に近くなる。
としている。
(ただこの小説を追ってみると、ゲームを発表した年号などが違っていたりするので、数字は微妙に異なるかも知れない(小説自体は”七割が実話”らしいが))
 
アンディーメンテ泉和良氏は、審査員の選考の結果、流水大賞を受賞、デビューした訳で、評価経済は影響しなかったかも知れないが、その後刊行された物を買うのは、フリーゲームのファンの人も多いのでは?(自分もその一人だし)
 

 
自分はここのところ、「なぜゲームなのか?」を自問していました。上記の通り、ゲームはコピーしても劣化しない。ちゃんとした物を作るには集団製作でないと難しく、そうなると利益率は低くなる。
今の世の中で儲けることを考えれば、不向きではないか?
ユーザーからしてみれば、選択肢もたくさんある。
仮に6時間で1000円のゲームを遊ぶ場合、TSUTAYAで名作映画を3本借りた方が感動するし、安くあがる。6時間なんて可愛いもので、中にはクリアまで十数時間必要なものもたくさんある。そうすると一時間辺りの感動は、とても薄っぺらになる。
ゲームは時間ばかり掛かって、大して感動しない。
ではないかと。他のコンテンツと比べてしまえば。
 
ただFREEの文中で面白いことが示されていて、「価値はお金だけとは限らない」「費やした時間も価値」と。
・・・要するにゲームは恐らく現存するメディアの中で、一番、1円あたりの時間がかかる選択肢である。だから暇潰しになるし、今はそんな役割としてのゲームも多い。ただ、始めから暇潰しを目的にしてるお客さんは、お金を落としにくい。
そうじゃなくて、投下した時間のぶんだけ、愛着を持ちやすいのだ、ゲームは。
 
小説談義で盛り上がるのは知的な趣味で、かなり数が少ない。音楽に関しても、これだけがんがん流れると、一曲あたりそんな聴きこまない=愛着が無いから、批評家もごく一部になる。一曲の時間が短いから、感想はごく短いものだし。
映画もコミニュティを作るのはけっこう難しい気がする。時間が短いからか? 参加してる感覚がないからか? あまりネット上でシームレスに感想を語れないからか。
 
・・・ゲームだけが、誰でも語れて(*文章や映画みたいに、自分はそんな体験した数が少ないから・・・なんて遠慮する人は少ない、ホントみんな素人が、自らの面白さに従って、好き放題に語る)長くプレイしてるので愛着を持つ。
なんだソーシャルゲームか、で終わりそうな話だけど、そうじゃない。
個人でもクリエイターごとに、クリエイターごとの規模のコミニュティを確立している気がする。
 
ゲームはおそらく一番時間が必要なコンテンツであるだけに、コミュティを作りやすい。
コミニュティとなったお客さんは、関連した作品にもお金を当然落としやすくなる。
冠を持つ神の手〜を調べたら、wikipediaニコニコ大百科の記事が出てくる。フリーゲームでファンになった人が作成したのだろう。
アンディーメンテは有料のCDに「教祖まゆみ様誕生」という曲もある。
(また時にアンディーメンテのファンは「信者」とも呼ばれたりする。これはアンディーメンテだけでなく、他のゲームでもそうだが。)
要するにゲームは、「信者」を作りやすいし、「信者」と呼ばれるくらいの人が居なければ儲からない、という事かもしれない。そういう特徴がある。
  
これは他のコンテンツからしても稀有な特性で、例えば広告・例えば他の商品を売る際にも、これから語れることかも知れない(狭く・深く関わる・・・だろうか。)
これをもって「なぜゲームなのか?」という答えが見つかった気がした。
 

 
・・・まぁ大仰なことを言ったけど、自分がFREEを活かすには、SRPGの発売に合わせてえろSTGを無料化とか(違う作品なので、つながってない気もするが)、SRPGの本体をフリーで配布して、追加の女の子を別売りにする、2体100円でユニットとして追加、Hシーンも追加されるとか、考えたりしますね・・・。
後は行動だが・・・。
えろSTGが今後細々と売れていくより、それをフリーで公開して、SRPGが少しでも売れる確率の方が高い気がしますな。