ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 感想2

ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略
クリス アンダーソン
早川書房
売り上げランキング: 27379
感想1:http://d.hatena.ne.jp/gamecome/20110918/1316337180
『FREE』の感想:http://d.hatena.ne.jp/gamecome/20110417/1294501968
 商品棚が限られていた”ヒットの時代”では、売れない商品を見極め、切り捨てるための策がたくさんあった。
マーケティングだとか、囲い込み(独占)だとか。
これは限られた選択肢の中での価値観であり、ヒットを成り立たせるための方法。
 
今や同じ嗜癖は競い合いでなく、お互いを紹介すると、ドンドン深まっていく。
ただ、そうして自分に本当にあった商品が目に届くようになると、実はどうでも良かった大衆向けの商品を、がんがん宣伝してるのでとりあえず買う…という事は無くなるのかも知れない。
 
 
だが言ってしまえば、「テールの作品を作る人は(お金の面だけでは)食えない」という意味にも取れるが…。
あるいは作品の収入だけで食っていけずとも、それで知り合った仲間たちとシェアしていけば、案外幸せでつましく? 生きているかも知れない。
無数のニッチが存在できることは、もはやそういった価値観の変移の話なのかも。
 
そういう面で『FREE』につながる話もあり、というか「評価経済」についてはむしろこっちの方が近いくらい。
そもそも頭にあたる「ヒット」と尾の「テール」では、製作する目的が違うから。
ヒットの目的はお金だが、テールは実はお金でなく、単純に楽しいからだったり、その事自体でお金を取らなくても他で取ろう、だったりする。
同人とかだと、お金を取っているとはいえ、動機が評価(自己承認要求?)だったりもする。
 
それでもやはり…ニッチの世界に生きる人は、これからもそれぞれの戦略を描いていくだろう。
誰かのキュレーション(影響力ある人が、面白いぞこれ!と取り上げて急に加速する)で、いつか爆発するのを待ったりだとか。
そんな戦略…を考えてみる。
 

ニッチの一つの戦略? コラボーレション

ヘッドの場合、利権関係が絡んでコラボレーションも難しいが、テールは本人の了承だけ取れば割としやすい、などの特徴もある。
さっきも書いた通り、コラボの結果どんどん深まっていって、需要が深まりつつ拡散していったり。
そういった事も考えられる。
 
コラボとかmixとかいうと、音楽の世界が一番近いらしい。(そもそもyoutubeの音源で、トラックをmixして勝手に作っちゃうとかね)
音楽はFREEの世界でも最先端、と筆者は述べていた。
コラボによるメリット…とかは、「シェア」の方が詳しいか?(「シェア」感想 http://d.hatena.ne.jp/gamecome/20110522/1315726731
あとはツィッターノミクス。(まだこれ感想書いてねえ…)
 

長く売れるもの、テールの売上を活用する

他に類を見ないくらい細部にこだわると、ロングテールに添い、長ーく売れる傾向がある?
111も色々DLsiteの作品をアフィで紹介して、ツィッターとかでも呟いたりして、中にはリツイートされて、一日で70クリックとか行ってる作品もあったんよ。(通常の3倍くらい)
 
でもそういう飛び抜けてクリック数を多い商品を抑えて、毎月、かならず一番クリック数多い作品がある。
「つっぱりドットシミュレーター」ですよ。
数年前にちょっとブログ記事書いただけなのに、未だに検索か何かで飛んで来て、クリックされてるっていう。
毎日3クリックされれば、それでも一月90になるしね。それが毎月同じ傾向で続いてる。
そういう効果。
まさにロングテールの威力。
 
この作品で言えば、最近になってDLsite上でドットエロを押したのも出てきてるんだけど、更にそこに加えてつっぱりシチュなんて、もう他に類を見ない、という。
発売一ヶ月くらいでは確か、500DLに達してなかった気がするから、まさにニッチ&ロングテールの強さの一例だと。
これからDLsiteが拡大し、一日の登録数が多くなると、新しい登録作品という事ですら、そんなに売れる要素では無くなるかも知れない。
(*今はひとまず、登録開始時から3日間が一番売れる勢いが強い)
例えば一日100とか登録されれば、もう新作のチェックすら面倒くさくなってくるからである。
性癖―発売順、くらいの絞り込みが行われるだろうし、そうすれば同じ嗜癖としてレコメンドなども行われる。
性癖も、今やタグ付けとかしているが、ここからもまた登録商品が溢れるようになれば、更に絞る機能は強くなっていくだろう。
今後、嗜癖を強く打ち出したニッチ&ロングテールが強くなる可能性はあるかも。
 
鋭く嗜癖にこだわった作品は長く売れる。
マニアックにこだわるという事は、中途半端な要素をカットすることで、コストを小さくするもできる。
そういう作品を3つくらい持てれば、長く売れるのが積み重なっていって、生活できるかも?
 
ちょっと本文から引用。
見返していて、今の111にとって結構重い言葉だったので。

無限の選択肢がある世界では、内容ではなく文脈が重視される。

文脈とはその作品にまで辿り着いた経緯のことだと思う。
つまりどういったジャンルで、どのタグ(嗜癖)に掛かっているか。
あるいはどの商品からレコメンドされたか、誰が薦めていたか。
既に絞り込んで探すことがデフォで、そこに至るまでの文脈が大事。
 
逆にそのどれにも掛かっておらず、嗜好がハッキリしなければ、購入者は判断が難しいだろう。
というか無限の選択肢があるので、目にも止まらないかも知れない。
 
スペックだけをただ、ごろんと置いても他に埋没する可能性は多くある。
その作品が持つストーリーが、結局他に絡んでいく事になるというか…。うーん。
 
単純に、ただ商品内容の宣伝するより口コミの方が強くなるよ、って意味か?
ニッチを好む人は、同類のニッチ好きな人の意見こそ、信頼するから。
 

ニッチ作品を作る人は、ニッチ作品を紹介する方面も強い

本書の〆の言葉を引用すると

今後問われるのは、選択肢が増えるのはいいことかどうかではなく、本当に欲しいものは何かだ。

欲しい物が見つかりさえすれば、選択肢が増えるのはもう良い事に決まっているから、という訳だ。
”欲しい物は何か”を見つけさせるには、前回の記事でも書いたけど、
・プログラムやアルゴリズムで嗜好を絞り込んでいく(レコメンド、検索、タグ機能)
DLsiteでは届かない細かい所までフォローしてやる?
とかがある。
 
でも、
・そもそも好きな物がイチから分からない場合に、熱っぽく啓蒙する(テキスト中心)
とかもアリだと思う。
 
前者の方がいかにもガッツリ儲かりそうだけど、後者も素敵だ。
後者の方は、その人がその嗜癖を好きだからこそ書く訳で、書いてる人の「評価」が高まりそう。
その文章を書いた人のファンになって、交流が続く場合もある。
これも長い付き合い(ロングテール)の一助になりそう。